大人こそ知っておきたい中学公民学び直し

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(2.1.2.6)人権の保障を実現するための権利

今回のテーマは人権保障のための権利で、その一例が参政権です。

政治に参加することがどうして人権保障につながるのか、参政権獲得の歴史も踏まえて考えてみましょう。 

 

「《参政権
日本国憲法は,基本的人権を私たちに保障するだけでなく,それを実際に政治の場で実現するために,参政権や請願権を保障しています。
安心して生活し,自由権社会権などの人権が実際に十分に保障されていくためには,国の政治のあり方に関心をもち,自ら政治に参加することが必要です。政治に参加する権利を,参政権 といいます。参政権の中心は,国会議員や地方議会議員, 知事や市(区)町村長を選ぶための選挙権と,それらに立候補する為の被選挙権です。


日本国憲法は、選挙を通じて政治に参加するだけでなく,国民が自ら重要なことがらを決定する制度も保障しています。憲法改正国民投票(第96条), 最高裁判所裁判官の国民審査(第79条)などです。 これらも,国民主権に基づく制度です。
また、国や地方公共団体に対して,苦情や法律の制定などの希望 を述べる請願権(第16条)も、参政権の一つです。そのほかにも,私たちは,集会・結社・表現の自由(第21条)などの権利に基づいて、国の政治にはたらきかけていくことができます。

《法による保護を求める権利(請求権)》
人権が侵害されたときには,その救済方法が定められている必要があります。 日本国憲法は,だれでも自分の権利が侵害されたときには,裁判所に訴え,公正な裁判によって救済を受けることができると定めています(裁判を受ける権利、第32条)。また, 公務員の不法行為によって損害を受けた人が、国や地方公共団体に対して損害賠償を求 める国家賠償請求権(第17条)や, 裁判で無罪になった人が国に補償 を求める刑事補償請求権(第40条)などの請求権が保障されています。」

 

 

早速解説を始めていきます。
今回のテーマは参政権です。

 

参政権の話をする時にいつも普通選挙の話から始めています。
少々お付き合いください。

 

フランス革命アメリカ独立戦争を経て、人々は自由を獲得し国民主権の考えに基づいて自分たちで政治をして行くことになりました。

 

しかしその当時、選挙権を持っていたのは一部の金持ちだけでした。

この辺りのことは歴史の教科書でもよく出てくることですね。

日本においても納税額が一定額以上でないと選挙で投票することができませんでした。

 

始まった当初は選挙に行けないということがそれほどの社会問題でもなかったのですが、産業革命が起き自由競争を元にした資本主義経のもとで経済成長が進むとともに格差も拡大していくようになった頃、人々は選挙権を持っていないという事の重大性に気づきました。

 

格差や貧困をどうにかして欲しいと思ってもそれを政治の舞台で議論させることができないのです。

 

国民主権のもとで国民主体の政治をするにはまずは自分たちの意見を政治の舞台に乗せることが必要です。


しかし選挙権がないとなると、自分たちの意見を代表して議会で言ってくれそうな人を選ぶこともできないので,結果的に政策決定の中に貧困に苦しむ人たちの意見は入らないことになります。

 

それから参政権獲得へ向けての様々な運動があって、世界の様々な法律の中で改良が加えられた末現在の日本国憲法では参政権や請願権を明記してしっかりと保証するようになりました。

 

一応根拠条文も見ておきましょう

 

第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

 

第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

 

第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

 

 

こんな感じで国民が政治に参加する権利が正当に認められています。

国会議員の選挙をだけでなく、請願権や表現の自由もあるので人々が政治的主張を言葉にするぶんには何の問題もありません。

 

 

 

法的保護を求める権利である請求権についてもお話ししておきます。
人権が侵害された時にその救済を求める方法が憲法で定められています。

 

一番わかりやすいのは裁判を受ける権利ですね。
自分の権利が侵害された時は誰でも裁判所に訴えて裁判を受けることができます。

 

参考

憲法第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

 

 

ただ実際問題弁護士さんを雇ったりするのに結構なお金がかかるので本当の意味で誰でもできるかと言うとちょっと疑問ではあります。

 

 

 

また公務員の不法行為によって損害を受けた人が損害賠償を求める国家賠償請求権についても定められています。

 

参考
憲法第十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

 

 

ここで言う不法行為とは、故意または過失によって他人の権利を侵害し、その結果他人に損害を与える行為をいいます。

要するに公務員による不法行為とは、警察官に怪我をさせられたとか、営業許可を不当に取り消されてお店を営業できなくなったとかそういったことを指します。

 

 

国家賠償請求権というのは公務員のした事が原因で誰かを傷つけたり迷惑をかけたりして損害を与えたりした場合に国や地方公共団体に損害賠償を求めることができるという制度です。

 

国家賠償請求と似ているけど違う概念として損失補償というものがあります。


損失補償とは、適法な公権力の行使によって加えられた財産上の特別の犠牲に対して,私有財産の保障と平等負担の見地から,これを調整するために行われる財産的填補のことです。

 

国家賠償とは違って、公務員の行為自体は法律で認められたものであるのだけれど、それによって私人に迷惑をかけてしまったという場合に金銭的な保証を認めるという制度です。

 

例えば、ダム建設によって沈む村の住人にお金を払うといったようなことです。
ダムを建設するという行動自体は別に違法なことではないのですが、それによって沈んでしまう村の人たちには迷惑がかかるので国家が税金を使ってその人たちの生活を保障する必要があるのです。

 

 

憲法にも根拠となる条文が存在しています。


第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

 

この29条の3項が損失補償の根拠条文です。

29条全体としては財産権はそれぞれの人に求められるものであって他人に奪われたりすることはないということを定めているのですが、参考で例外を示しています。


29条3項を逆から読めば、正当な補償があればという財産を公共のために使ってもいいということです。

このように個人の権利と結果全体の利益がうまくバランスが取れるように工夫して作られたのが今の制度なのです。